法学

2009年11月20日 (金)

法学セミナー2009年12月号 660号

法学セミナー 2009年 12月号 [雑誌]

 ロージャナール「立法と現場」に、立命館大学の本山敦さんの「改正臓器移植法-民法・家族法の視点から」という短い記事がありました。

 本山さんは「<慎重派>に与する。病児や家族の苦しみ・悲しみを思わないではないが、脳死を<人の死>とする見解に納得できない。だから、ドナーにもレシピエントにもなりたいと思わない。これは、法律の理論的な検討から導かれた結論ではなく、そのようなものに先立つ、人生観・人間観・生命観とでもいうしかない」(3頁)。

 そして、感銘した一文を引用して論文を終える。

 「人間が生きるということは、すなわち不幸を人間の条件として受け入れることではないか。」(湯川豊『須賀敦子を読む』141頁〔新潮社、2009年〕)。

 本山さんが立場を明らかにしたことは、別に何とも思いません。人生観・人間観・生命観による立場なのだそうだから、そういう立場であることを否定するわけでもないんですが・・。

 感銘を受けたという一文については、わたくしは全然感銘を受けません。不幸を人間の条件として受け入れたくはないですし、そんな運命を変えてみたい、替えるよう努力したいと思います。

 とても気になったのが、改正法の問題を書いているところにあった一文。

 「ちなみに、A案の提案者(中山太郎氏)をはじめ、A案に賛成した前衆議院議員の相当数が、先の総選挙で落選している。」

 先の選挙で、臓器移植法って論点になってましたか?

 上記文章は、「国民の意識の変化や国民の要請もないのに、臓器移植法の基本原理の変化を内容とする改正案はいかがなものか。そのような案に賛成した議員は、民意とかけ離れているのだ。だから落ちたのだ」ということを言いたいんだな、と行間から読み取ることができます。これは、わたくしの深読みしすぎというわけではないと思います。こういう風に感じたからこそ、ブログの記事にしようと思ったんですから。

 法学教室2009年12月号=351号の38頁の甲斐克則早稲田大学教授の「改正臓器移植法の意義と課題」の方が、今後の課題を浮き彫りにしていると思う。

 是非、読み比べてほしいと思います。

法学セミナーには、前田達明先生が「法の解釈について-民法の解釈を例として(前編)」(36頁以下)を書いています。誤植発見。

 36頁下から9行目;(誤)民法496条第2項 ⇒ (正)民法446条第2項

2009年11月14日 (土)

行政法の入門書。

行政法の本で最初に読んだのは、原田先生の本でした。

行政法要論 全訂第6版  [本]

ゼミで使用したということもあり、愛着のある本です。章ごとに設問が用意されており、この解答を準備するのが大変でした。百選だけではなく、いまは絶版の塩野先生との共著「行政法散歩」や「演習行政法」等を図書館で借りて、勉強したな~。

しかし、そのおかげで行政法の基本は身についたと思います。原田・要論を使用するのであれば、この設問を解かなければ意味がないと思います。

そのあとに、藤田先生の行政法総論を読んだのですが、サクサクっと読めました。塩野先生のは辞書的な使用をしていました。

行政法は入門書が充実していると思います。

古くなりましたが、原田先生のプレップ行政法(弘文堂)は名著でした。体系・概略をつかむには素晴らしいものでした。

その後継版(高木先生)は、行政法のイメージをつかむために書かれたという印象。概説という感じではないですネ。

プレップ行政法 (プレップシリーズ)

しかし、現在の入門書No.1はやはり藤田先生。

行政法入門

現在、これに続く?宇賀先生とそのお弟子さんたちが書いたモノを読んでいます。こちらもオススメですネ。

 ブリッジブック行政法

例がとても参考になり、イメージをつかみやすいと同時に、体系的な理解をつかむきっかけになる本だと思います。もう、電車の中でサラっと読めます。

行政法の理解につまったら、藤田先生や宇賀ファミリーの入門書を読むとヒントをつかめるなんていうこともあるのではないでしょうか。

2009年11月 5日 (木)

今年選んだ判例付六法

有斐閣判例六法Professional 平成22年版

判例六法Professionalを初めて買いました。ちなみに昨年は模範小六法。

判例六法が2つに分かれる前は、毎年、有斐閣の判例六法を使用していました。百選等のリンクがされているのが使いやすかったので。

しかし、2つに分かれてから、いままでと同じ仕様(学習者用?)のものは小型化したのが気に食わなかった!厚くして小型化(B6変形判)されましたが、使いにくいように思いました。

そしてProfessional。以前と同じA5判で見やすいと思います。縦4段の方が良いな~。

あとは、今後、使用していく上で、2分冊なのが良いのか悪いのか・・・。

2009年10月 2日 (金)

イギリスで最高裁判所発足。

イギリスで、10月1日、最高裁判所が発足しました。立法と司法の機能を分離すべきだということだそうです。

イギリスでは、約600年にわたって、国会の議会上院(貴族院)が最高裁の役割を果たしてきていました。

今後は、上院議員12名が最高裁裁判官になって、議員の職を離れるそうです。審理の様子もTV中継されるなど、「司法改革」は日本だけではないようです。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090930-00000205-jij-int

http://www.jiji.com/jc/zc?k=200909/2009093001020&rel=y&g=int

http://www.47news.jp/CN/200910/CN2009100101000653.html

http://www.supremecourt.gov.uk/index.html

http://dailynews.yahoo.co.jp/photograph/pickup/?1254469468

イギリスでは、議会制定法=法律が最高法規であり、それに優越する効力をもつどのような法規範も存在しない、という「国会主権」という考えが採られていました。そのため、議会制定法を拘束する硬性憲法は存在せず、最高法規としての憲法を基準としておこなわれる違憲審査制も存在しないのです(樋口陽一「比較憲法(全訂第3版)」(青林書院)118頁)。

そして、イギリス独特の制度として、上院は民事刑事の上訴管轄権を持ち、上告裁判所としての権限をもっていました(樋口・前掲408頁)。これが今後、イギリス最高裁判所に移るんですネ。

「平成22年版 ポケット六法」有斐閣 購入。

ポケット六法 平成22年版

平成21年9月1日の内容です。東大系の先生方が編集。

昨年使用していた小型の六法は、三省堂のデイリー六法。今日、書店には置いてなかったですネ。

ポケット六法がやはり使いやすいな~。紙質、表紙の手触り。法律の配列等も含めて、長い間、有斐閣の六法を使っているので、慣れがあるのでしょう。岩波の六法は使ったことがありません。憲法は良いという評判を聞くのですが、それだけだからナー。

二宮先生の「家族法」の第3版が出たようですネ。今の時点では、わたくしの住んでいる書店にはまだ置いてないです・・・。二宮先生の本は初版のときにしっかり読みこんだのですが、解釈論という感じがしないな~というのが感想。第2版から判例も入れ替え含めて108件補充だそうで・・・。

ただ、近い将来、夫婦別姓が通りそうなので、すぐに第4版になってしまうのでしょうネ・・・。大村先生や吉田先生は夫婦別姓賛成派で、内田先生は反対派だったように記憶しています。

新世社といえば、潮見先生の「基本講義債権各論Ⅱ不法行為」の第2版が今月中旬までには出るそうで・・・。

http://www.saiensu.co.jp/?page=book_details&ISBN=ISBN978-4-88384-142-4&YEAR=2009

こちらも期待大です。

2009年8月12日 (水)

清永聡「気骨の判決 東條英機と闘った裁判官」新潮新書

清永聡「気骨の判決」(新潮新書)を一気に夜のうちに読みました。

8月16日に同名のがNHKで放映されます。これもぜひ、見たいと思います。

内容は・・・

「吉田久、命がけで東條英機と闘った裁判官―。政府に非協力的な国会議員を排除する意図があったとされる『翼賛選挙』では、聖戦遂行の美名の下、国民の投票の自由を実質的に奪う露骨な選挙妨害が行われた。他の選挙無効の訴えが退けられる中、吉田は特高の監視や政府からの圧力に負けず、戦時中に唯一の『選挙無効』判決を下す。これまでほとんど知られることのなかった気骨ある判決と孤高の裁判官の生涯を追う」(同書の表紙裏より)。

戦争間近のあの時期に、戦争へ向かう政府・軍部に迎合することなく、戦った無名の人たちに、感動しました。Rockです、生き方が。気骨あふれるというか、反骨の精神というか。でも、知りませんでした。こういう人たちがいることを、ちゃんと歴史で教えろっちゅうねん。杉原地畝さんといい、もっと日本人に知られて良いと思うんですがネ・・・。

判決書が載っているという、書籍は、明日、図書館で借りてきます。

以下、自分の気になったところ。

53頁以下「第一回口頭弁論が開かれる前に、自ら各民事部の部長に呼びかけて、台新院内で裁判官会議を開いたのだ。議題は法律の解釈だった。・・・吉田が問題視したのは、当時の衆議院議員選挙法82条の解釈だった。」
 「選挙の規定に違反することあるときは、選挙の結果に異動を及ぼすのおそれある場合に限り、裁判所はその選挙の全部または一部の無効を判決すべし」
 この「選挙の規程」に違反して無効となる場合について、当時は、手続きの問題や管理ミスに限るという説が有力だった(『改正衆議院議員選挙法示解』)。無効な選挙人名簿によって選挙を行ったとき、選挙に際し投票所の告示をしなかったとき、告示した場所において選挙をしなかったとき、選挙人でない者が投票をしたとき、正規の投票用紙を使用しなかったときなどが、その例と考えられていた。したがって、翼賛選挙のような組織的な選挙干渉や妨害を「規定違反」に該当するかどうか、選挙法は想定していなかった。
 しかし、吉田は、衆議院議員選挙法の規定は、公選の精神を保つために定められていて、大規模な妨害や干渉によって、有権者の意思が抑圧されて、それが選挙全体に影響を及ぼすことになれば、法律が目指す自由で公正な選挙が行われたことにはならない、したがって、そのような場合は選挙無効の判決をすべきだ」という解釈を、各民事部の部長に述べて、同意を得たそうです。この会議が、のちに生きてくるのですが・・・。

以下、チェックしたところ。

67頁の前田直之助の言葉。

77頁の大河内輝耕(貴族院議員)の東條首相に対する、選挙干渉の危険性を指摘する質問。

81頁の吉田の、死を覚悟した鹿児島出張。

86頁、松尾實友の法律時報(昭和18年3月15日号)の座談会での発言。

113頁、大審院長の長島毅の法律時報の「戦争と法律」(昭和18年7月)。

117頁、憲法学者の美濃部達吉の、住居侵入罪(出征中の軍人の妻と情交する目的で回にわたってその自宅に立ち入った事件)の判例批評。

127頁以下の東條演説事件(司法省に対する脅しです)、とくに134頁以下。

141頁の戦前の裁判所の状況(101か所閉鎖、200人の裁判官・検事が陸海軍に転出など)。

141頁以下の、尾崎行雄不敬罪事件の無罪判決(三宅正太郎が裁判)。

143頁以下の、裁判への軍部の干渉の事例。

145頁以下の、岩松東京民事地方裁判所所長の義勇軍のエピソード。

159頁以下の、大河内輝耕が、貴族院予算委員会で、無効判決を取り上げての質問。

179頁。久野修慈中央大学理事長(製糖工業会会長)の吉田評。「吉田先生はね、一言で言うと『人間主義』なんです。自身が社会の底辺で苦労を重ねただけに、貧しい人にも豊かな人にも、一歳の予断を抱かずに、平等に謙虚に耳を傾け、その人のことを全て信頼しようとする。そこが立派でした。企業のリーダーも同じなのです。大切なのは商売の才能よりも、人を信頼し、人の話をどれだけ真剣に聞くことができるかということなのです」。

同頁。久野氏が「正義とは何か」という問いを投げかけた。吉田はこう答える。「正義とは、倒れているおばあさんがいれば、背負って病院に連れて行ってあげるようなことだ」。

182頁以下。尾崎末吉の昭和29年の冨吉栄二の追悼演説。

187頁、無効判決の原本が生き延びたわけ。

192頁。「吉田はどのような政治体制の元であろうとも、おかしいことはおかしい、と言い続けたいと考えていた」。

このほかにも、吉田氏は苦労して裁判官になった話、吉田の他の裁判の話など、興味深い話が載っています。

2009年8月 9日 (日)

気になるドラマ 「気骨の判決」

http://www.nhk.or.jp/nagoya/kikotsu/index.html

8月16日21時から、NHKで「気骨の判決」というドラマが放送されます。

昭和17年4月30日実施の衆議院選挙について、大審院が、この選挙を無効という判決を出すのですが(大判昭20・3・1)、その判決を書いた「吉田久」裁判長のストーリーだそうです。

当時の状況(大政翼賛会、司法の独立の危うさ、国に従属していた地方行政など)が上記HPにも説明がなされています。

自分の信念に基づいて、権力者に迎合せず、まさに「気骨・反骨」の精神で、生き方がROCKだな~。お塩さんのゴロクと生き方の大きな齟齬とは、わけが違います。

新潮新書で同名の書物をもとにしています。著者が、NHKの大分放送局の記者なんですネ。

2009年8月 8日 (土)

裁判員裁判

日本初の裁判員裁判が東京地裁で行われ、初の判決も出されました。来週はさいたま地裁で行われるようです。

7日の朝日新聞3面に、「裁判員」の名付け親、松尾浩也先生が感想を述べています。

① 法廷でのやり取りが中心の公判に一変し、市民と裁判官との協働による日本独自の「裁判員制度」は好スタートを切ったと言っていいだろう。

② 法曹三者が改革の方向性をしっかりと把握し、準備に多大な努力をされたことが感じられ、業界用語を排し、市民生活に即した言葉を使った意義も大きい。

③ 裁判員の人たちは非常に真剣で、素朴な市民感覚を漂わせながらも、全力で事件に取り組まれたと思う。

④ 今回の裁判で少し気になったのは、被告の近所付き合いや生活態度について、有利な事情を語ってくれる情状証人は見つからなかったのか、という点。

⑤ 事件の争点や審理の計画を決める公判前整理手続きが、裁判員裁判の成功の鍵をにぎっている。審理期間が長引きそうな複雑な事件でも、適切な争点整理ができるかが、これからの課題。

裁判員最初の質問は、調書の信用性についてでした。これについては、犯罪被害者団体の方のコメント、「被害者の遺族は、犯罪にあってすぐの状態のことを、ちゃんと覚えているのは無理。混乱しているのが普通」という趣旨のコメントが、印象的でした。

法学セミナー8月号では、前田雅英教授の「裁判員のための刑事法入門」(東京大学出版会)の書評が載っており、日常用語で説明しきっている点を誉めていました。最近、前田先生の著書を買っていないから(刑事訴訟法第3版も、最新重要判例250刑法第7版も買っていません)、ちょっと購入してみようかな~。

裁判員のための刑事法入門

2009年8月 7日 (金)

法学セミナー8月号

法学セミナー 2009年8月号 [雑誌]

新刊ガイド(143頁)に、小山剛「『憲法上の権利』の作法」(尚学社)を、あの棟居教授が書評。

チクッとする文も1文ありましたが(カッコ書きですが)、全体的に評価されていました。というより、「芦部憲法学の今日見られる不幸な通俗化(「目的は重要である、しかしながら、より制約的でないこれこれの方法が考えられるから、当該規制は手段違憲である~」の類の、「論証パターン」と呼ばれているらしい定型文などはその最たるものである)への強烈なアンチテーゼ」というところを評価していると思いました。「芦部憲法学の目指したものを、ドイツ憲法裁判所の蓄積したツールで実現しようとする、きわめて理論水準の高い意欲作」と述べています。

また、早稲田の松原先生が、条件関係論を書いており(118頁以下)、合法則的条件公式説への批判を展開し、論理的結合説を支持しています。

あと、最新判例演習室で、わたくしの大学時代のゼミの先輩が1つ執筆されていました!共同著書ではありますが、教科書も1冊書いていますし、頑張っているようで、うれしいです!

2009年6月24日 (水)

法学教室346号(2009年7月号)

法学教室346号と、ジュリスト1380号を同時に購入。

ジュリストについては、近日、UPします。

法学教室346号ですが、1点。

目次に誤字が・・・。

「KEY WORD 2 裁判院法施行」。

あら。やってしまいましたネ。

目次だから校正にあまり力を入れないのかな?訂正も出ないだろうな~。こんなミスなら。

クスッと笑えた誤字でした。