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2015年1月19日 (月)

池田真朗「民法(債権関係)改正作業の問題点~『民意を反映した民法典作り』との乖離」世界2015年2月号258頁以下

岩波書店の雑誌「世界」を初めて購入。

理由は、表題の通り、あれ、改正を進めていたんじゃないの?と思っていた池田真朗先生が、改正作業の問題点を指摘していたからです。

1.経緯の概要と問題の所在

2.民法の内容と今回の改正範囲

3.改正作業の出発点からの疑問

4.「学理優先」という学者の世間知らず

5.問題の根源は法律学のありかたに

6.市民法としての民法の本質

7.我が国の市民社会は成熟したか

8.民法の取引法化

9.法学部教育の問題点を俯瞰して

という内容。

最初に話の流れをまとめてくれています(258-259頁)。

① 客観的に見て、日本の民法典が現在それほど奥の問題をかかえているわけではない。

② しかし、このあたりで、120年を超える歴史を持つ民法典を見直して、その間の判例法理の準則を条文に取り込んだりして国民に分かりやすい民法典を作る、という法制審議会の諮問自体はそれなりに意味のあるものだった。

③ けれども、最初に諮問内容を無制限にして学者ばかりの意見を集めたという経緯から、長大な審議のかなりの部分が、先行した、学者委員たちの新しい学理や国際的動向を反映した提案に、実務界からの委員の疑問や反発が提示されるという、プロの間だけの議論の場になった。

④ 肝心の、現実の紛争解決に何が問題なのかとか、これからの市民生活にとってどういう民法が望ましいのか、という観点からの議論が置き去りになっていた感がある。

⑤ 要綱仮案は、突出していた新奇な論点をかなり削ぎ落としたようにも見えるが、精査すると、上記経緯が影響していて、結局学理的な発想で提案され、学理的な問題意識で分析されて出来上がった改正案で、現実の検証不足と思われるものがなお目立つ。

⑥ 2015年初旬に現在の改正要綱仮案が法案となって国会に上程されると、そのまま改正となってしまう可能性がある。

分かりやすく、そして「ここまで言っちゃって大丈夫?」というようなことも述べられています(もちろん、池田先生のお人柄でしょうが、ソフトあ表現です)。会社法改正後の民事局の人員配置を縮小しないため、とか(加藤雅信先生の改正作業の経緯に関する批判)、「学者の野望」(これは経団連の方の発言を引用)とか。

詐害行為取消権、債権譲渡禁止特約のように分かりにくくなっているもの、危険負担の改正作業の経緯、などを通じ、「民意を反映した民法典作り」になっていないのではないかと指摘しています。

今度、大阪で有斐閣主催の京大民法教授陣による解説講義が行われるそうですから、参加される方は、是非、一度、池田論稿を読んで、質問してほしいと思います。

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