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2009年6月25日 (木)

ジュリスト1380号 2009・6・15

特集が「加藤一郎先生の人と業績」ということで購入。

 ジュリスト 2009年6月15日号

加藤一郎先生は
2008年11月11日に
逝去されました。

その際の、
本ブログの記事が、
こちら。

http://last-rock.cocolog-nifty.com/blog/2008/12/20081226-bc5c.html

内容は、「座談会 加藤一郎先生の人と業績」(森島昭夫先生が司会。淡路剛久先生、畔柳達雄弁護士、寺田逸郎さいたま地方裁判所長、宮原守男弁護士の計5名)
星野英一東京大学名誉教授「加藤一郎先生の思い出」
加藤雅信上智大学教授「弟子から見た加藤一郎先生」
水野紀子東北大学教授「末弟子から見た加藤一郎先生」
大塚直早稲田大学教授「加藤一郎先生の不法行為理論と実践」
小粥太郎東北大学教授「加藤一郎先生の民法解釈方法論―『民法ノート』風」

です。

座談会では、
はじめに
Ⅰ 加藤先生の民法学
Ⅱ 公害・環境法
Ⅲ 自動車事故・被害者救済制度
Ⅳ 医療法・医療と人権
Ⅴ 法制審議会民法部会
おわりに

という内容です。

 星野先生との利益衡(考)量論との違いが、星野先生が価値絶対主義に立つ利益考量論、加藤先生が価値相対主義に立つ利益衡量論だというところのくだり。「現実の社会では、唯一の正しい価値があるということではなく、いろいろな立場の人があり、多様な価値があって、法あるいは法解釈というのはそういう多様な価値の中から、ある時代の社会関係の中でもっとも多くの人に利益をもたらす(もっとも少ない人に損失を与える)ある価値を選択し、その選択を合理化するための社会的手段だ」、というのが(加藤)先生のお考え(11頁)。「法律の概念が先にあって、いわば上から下に三段論法的に、大前提としての法規を小前提としての具体的事実に適用すれば論理的に結論が出てくるということではなくて」(環境権の議論について、このような傾向を危惧された、というお話もありました)、「問題となっている事実を前提にして、現実の利害関係を分析し、それを比較衡量してどのようにトレイドオフするのが社会的にオプティマルな(最適・妥当な)解決かを選択して、法規はむしろその選択の結論をどのように理由づけるかという考え方でやってこられたように思います」(11頁、以上、森嶋先生のご発言)。

 そのほか、①法律学全集の「農業法」が法律学全集の最後に出版された経緯(12頁、淡路先生のご発言)、②民法解釈の問題へのアプローチとして、その議論の実益は何かを考え、それを提示しながら展開するというアプローチ(13頁、森嶋先生のご発言。鈴木禄弥先生もよく実益の観点を民法解釈の実践において使われているという指摘もされています)、③不法行為における416条類推適用の可否について、適用説(法律学全集『不法行為』)から平井理論を取り入れたこと(『新版・判例演習民法Ⅳ』)、④リステイトメント研究会、⑤環境権についての議論、⑥基地騒音の調査の際に泊まった旅館での火事のエピソード、⑦家庭用自動車約款・交通事故紛争処理センターの設立・JA共済との関係、⑧生命倫理懇談会、⑨相続法改正(31頁)、⑩夫婦別姓の話など、本当に興味深い話ばかりでした。

 とくに、印象に残ったのは、寺田逸郎さいたま地方裁判所長の「加藤先生から見ると、私はご自身の学生よりさらに若い、全くの若造だったわけですが、加藤先生は本当に骨の髄まで民法学者だと感じさせられました。それは、私だけではなくて、私どものスタッフの若い局付に至るまで、全く対等に、1人の人格としていつも対応していただいたからです。民法の先生はそうなのですが、加藤先生は特にそういう方で、私どもは感動しつつ仕事に当たったことを、いつまでもよく覚えています」(33頁)、という発言です。

小粥太郎東北大教授の「加藤一郎先生の民法解釈方法論―『民法ノート』風」では、問題解決手法としての利益衡量論を分かりやすく説かれています。民法ノートも絶版なんですよネ・・・。

また、大塚直早稲田大学教授の「加藤一郎先生の不法行為理論と実践」も加藤説の変遷といいますか、現在における加藤説の位置を示していて、興味深かったです。平井先生の批判を受けて、因果関係のところでは理解を示されているところなどは、懐が深いなーと思いました。

加藤雅信先生の「弟子から見た加藤一郎先生」での、雅信先生が研究者の道に入られる時のエピソード、水野紀子先生の「末弟子から見た加藤一郎先生」でも、女性の弟子を取らないと公言する教授がいた中で、水野先生が研究者の道を歩むべきかの相談をした際のエピソードも興味深かったです。水野先生へのお言葉は、水野先生にとって心強かったと思います。「僕もできるだけのことはするから」。

加藤一郎先生のお人柄がよく分かる内容でした。このような先生にご指導いただけるというのは、素晴らしいことですネ。民法学者の前に、1人の人間として素晴らしい方であるなー、と。

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