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2008年12月26日 (金)

井田 講義刑法学 総論 その4

忙しいので、少しずつのUPとなりますが。

第5章「構成要件」第1節意義以降。

第3節「構成要件と他の犯罪要件との関係」では、4分説(行為→TB該当性→Rw→S)を批判し、3分説(TB→Rw→S)を採る。

そして、構成要件は違法類型であることを説き、違法類型であることを徹底して、違法性阻却事由の不存在も構成要件要素だとして、消極的構成要件要素の理論を採用する(92頁)。法益侵害行為とそうでない行為とは、いずれの行為も、違法性がない行為(適法行為)という観点から、大きく同一のグループに分類されるとする。

しかし、違法・有責類型説の通説とは異なり、有責類型であることは認めない。TB該当性が認められても、それは責任判断の一部が行われたにすぎず(責任能力は構成要件要素と通説も認めていない)、責任が推定されることもないので、TB該当性とRwの関係とは大いに異なることを理由とする(94頁)。

故意と過失を純然たる責任要素と理解しつつ、これを有責類型として構成要件の要素として位置づけるとすれば、TB該当性の判断が行われることにより、重要な責任要素の存在が確認されることになり、責任推定機能を認めることも可能ではないか、という論に対しては、

① 違法類型である構成要件該当性の判断の段階で、重要な責任要素まで考慮するならば、違法性と有責性との混交が生じ、体系上、責任の存否と独立に(それに先立って)違法性の有無を確定することが不可能となること、
② 構成要件と違法性の間だけでなく、構成要件と責任との間に密接不可分な関係を認めるとすれば、犯罪の成否を1回的に判断することに近づくおそれがあること、

などから、構成要件は違法類型であるが、有責類型ではない、とする(94頁)。

消極的構成要件論を採るのに、「犯罪の成否を1回的に判断することに近づくおそれがある」って、どうなの?っていうのが印象・感想。この後の、説明を楽しみに読み進めてゆきます。

法人の刑事責任については、師匠の福田先生の法人犯罪能力否定説は採らず、肯定説を採用しています。行為責任と監督責任の区別が説かれ(刑法の教科書ではここを書いていないものがあるので、好印象)、監督責任の場合の法人処罰を基礎づける過失については、判例が過失推定説を採ることの説明だけが行われています。

犯罪の分類のところで特色のあるところは・・・

1.不可罰的事後行為は、正確には「共罰的事後行為」と呼ばれるべきであるとされていることに賛同(104頁)。

2.正当防衛の要件としての「不正の侵害」は構成要件に該当する行為である必要はないから、継続犯であれば正当防衛が可能であり、状態犯であれば不可能であるというように一般化できるものではない(105頁)。

3.主観的構成要件要素について
 
;結果無価値論によると、一定の主観的要素の存否が外部的行為のもつ法益侵害の危険性の有無・程度に影響する場合に限り、主観的違法要素が認められる。甲がAの背後でピストルをAに向けその引き金に指をかける行為は、もし殺意をもって行われるならば、生命という法益に対する危険性をもつが(次の瞬間にAの死亡をもたらす危険がある)、もし引き金を引く気が全くなく単なる悪ふざけのつもりであったとすれば、そこに生命侵害の危険性は存在しない。結果無価値論は、この事例のように、法益侵害の危険性の存否・高低が行為者の主観に依存している場合にのみ、主観的違法要素を肯定する(佐伯仁志、西田、林、平野、山口)。
 このような意味における主観的違法要素(結果無価値要素としての主観的違法要素)が認められる典型例は、目的犯である(110頁)。

 ここの説明はうまいですネ。最初に前田先生の刑法総論を読んだときに、前田説は主観的違法要素を認めないので(上記事例では危険性は同じと考えることになる)、すごい違和感を感じたのを思い出しました。いまは、前田説もわかるのですが、目的犯、とくに偽造罪の説明が弱くなってしまうと思います。

4.違法要素としての故意・過失

 最近の行為無価値論は、刑法の任務は法益の保護にあるとする立場から、行為規範論に基づき、故意を違法要素として把握することの方が、刑法の一般予防目的に照らしてより合理的である。
 刑法が法益を保護するための手段は、行為規範(行動準則)を通じての行為統制、すなわち、一定の行為を禁止する規範を規範の名宛人たる人々に向けて明示し、その違反に対して刑罰を科すことによって規範の効力を維持し、人々を規範に従った行動へ導くことである。そして、行為規範の内容は、行為者が何を認識しているのか(故意があるのかないのか)によって異なる。・・・過失行為を禁じるためには、故意の行為を禁じるのとは別の規範が必要である。故意犯と過失犯とでは規範が異なり、したがって構成要件が異なる。・・・そして、より効果的な法益保護(一般予防)のためには、法益侵害・危険に向けられた意思的行為を、そうでない行為と比べてより強く禁止し、より強い規範的行動を加えなくてはならないことも当然である。
 このように、法益保護の見地から、故意行為を禁止する規範と、過失行為を禁止する規範とは、刑法規範として区別されるべきである。故意犯と過失犯とは、それぞれ異なった規範に反する行為であり、また、その違法性の程度において異なっている。このようにして、故意・過失は、未遂の場合に限らず違法性の有無・程度に影響をもつ違法要素として理解されなければならない。

 故意犯と過失犯とが異なった規範というのは、分かります。しかし、違法性の程度も異なるのか。むしろ責任の程度の違いじゃないのかな。被害者側に立って考えたときに、人一人が死んだという場合、故意で殺されようが、過失で死に到らせた場合であろうが、法益侵害の度合は変わらないという結果無価値論の議論の方が、納得できます。客観的な悪さ(違法性)と主観的な悪さ(責任)とを分けて考えた方が、良いのじゃないかな~。こういう考え方をしているわたくしが、最後まで読むと、心を動かされるのかな~。

 以上、第5章まで。

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