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2008年9月19日 (金)

平井宜雄「債権各論Ⅰ上」 自分なりのまとめ②

9月6日の記事のつづき。

「第2章 契約の概念」「第1節 契約の意義および機能」「1 契約の意義」。契約は「当事者間の自由な意思に基づいて取り決められた債権発生原因の1つたる合意」の意味で用いられることが明らかにされる。

「2 契約の機能」「(1)契約と市場機構」では、排他的支配の対象および範囲の社会的承認、つまり所有権(排他的支配権)と合意が守られる社会的な保障つまり契約とは、市場機構を支える最も基本的な法的枠組みとなる、とされる。

「(2)市場の変化と契約」。契約が市場機構を支える最も基本的な法的枠組みだとすれば、市場が変化すれば契約概念もその機能も、それに対応して変化するとし、(ア)市場機構の作用する範囲(取引圏)の著しい拡大、(イ)取引の国際化・大規模化・迅速化の急速な進展(通信技術の驚異的な進歩)、(ウ)大企業が重要な取引主体として登場したことに伴って生じた変化、(エ)市場機構そのものの変化、(オ)消費される財の著しい多様化を挙げられる。

「3 本書の対象たる契約」では、上記契約の定義のもと、その原型をいずれに求めるべきかについて、取引の現実に迫るのに有用な理論的道具の提示を意図するところから、B2B契約(business to business)をもって現在における契約の「原型」と把握することが明らかにされる。

「第2節 契約法と契約法学」「1 契約法学の地位」「(1)契約の重要性と伝統的契約法学」では、「裁判規範としての契約法学(契約をめぐる紛争につき訴訟が提起され、裁判上の解決を求められたときに、裁判官が適用すべき諸規範を提示するための学問分野)」を伝統的契約法学と呼び、現代において重要でない旨の指摘がまずされる。その理由は、(ア)現在の最も重要な取引主体は企業であるから、現在の社会で量的にも質的にも最も重要な契約は、企業間におけるものであること、(イ)最も重要な取引主体たる企業は、大きな費用のかかる訴訟にはよらない紛争解決をより多く好むことになり、契約書または約款には、訴訟を回避し私的な紛争解決を選択する趣旨の条項が盛り込まれることになること、(ウ)継続的契約は現在の取引の最も基本的な形態であるが、その基礎をなす安定した社会関係は、「信頼」という社会規範(信頼規範)を生み出すが、紛争が生じた場合でもいわゆる「握手による解決」がなされること、(エ)各種のルールや合意によって作り上げられた無形の商品は、極めて複雑かつ複合的な契約によってなされていること、からである。現状はまさに、伝統的契約法学の「危機」である。この「危機」に直面して契約法学が採るべき方途は何か。

「(2)今後の契約法学の方向」では、契約法学が採るべき方途として、(ア)契約が用いられる社会学的実態を探究し、この実態に基づいて契約法学を構築するという途(来栖先生の「契約法」、北川先生の「現代契約法Ⅰ・Ⅱ」がこの方向を示しているとして挙げられている)、(イ)いわゆる「予防法学」をもって契約法学の進む方向と答えることが考えられるが、両者の弱点を指摘する。もっとも、「予防」法学という発想は、多かれ少なかれ「紛争発生前または契約締結前(取引開始前)に(つまり「事前に」)権利義務関係を定めておく」という考え方に立っているものと思われ、参考にされるべき発想である、とされます。

そこで、平井先生は、「現在の法律家に求められる契約法学とは、『特定の取引主体間における権利義務関係を事前〔取引開始前〕に設計することを主要な任務とするもの」と再定義します(38頁)。この再定義は、伝統的契約法学と異なった問題に契約法学を直面させる、とされます。

そして、「権利義務関係を事前に設計する場合、最も重要な着眼点の1つは、当該取引を巡って紛争が生じ訴訟が提起されたときにどのような判決が下されるかを予想し、かつ究極的には「信義則」および「条理」という規範に支えられた判決を得られるようにしておくことである。そのためには、疑問の余地の生じないよう明確に権利義務関係を契約書中に表現する能力が要求され、裁判によって権利義務関係が確定されるためには契約の解釈という作業によらなければならない以上、契約の解釈という作業の性質を明らかにしなければならない」、とされます。これは、民法の「契約」の章に属する規定に依拠すれば足りるという単純な作業ではない、と指摘されています。そこで、76頁以下で契約の解釈の具体的基準を可能な限り明らかにすることが行われます。

また、市場において入手または調達の容易な財(たとえばチョコレートや建材のように規格化され大量生産される商品)の取引を「市場型契約」と呼び、それが困難な財(非代替性の大な財。たとえば、特定企業の買収、特殊な金型製作の技術を持つ企業への金型の発注)の取引を「組織型契約」と呼んで、この2種の契約のもたらす権利義務関係の様々な差異を明らかにするとともに、この2つを現在の社会における取引の現実を把握する理論的道具として位置づけられます(39頁)。

なぜなら、契約上の権利義務の設計の仕方を決定するのは、当事者が達成しようとする取引(契約)の目的であり、その目的を達成するための権利義務の設計の仕方は当該契約により入手すべき財の性質によって異なるからであるとし、丁寧な論証が行われます。

そして、「権利義務関係の設計を任務とする」と定義された契約法学は、かえって典型契約の意義を明確に示すことができる、とされます。それは、契約実務では典型契約の規定を手掛りとして契約書を作成し、取引から生じる権利義務関係をあらかじめ設計して取引に入るのであり、典型契約の規定には、重要な役割(権利義務関係の設計のための重要な道具の1つ)が与えられているから、とされます。今後の契約法学は、この視点から典型契約の意味と適用範囲とを明確に示すことに努めるべきである、と述べられています(40頁)。

そして、「契約法学は、法的知識の伝達のためには今後とも法律学の伝統的仕事に従事すべきであるが、このような伝統的な仕事の意味が、一般的には薄れつつあることに鑑みると、伝統的仕事が依然として意味を持つ分野と意味を失いつつある分野とを、次述の契約行動モデルを用いて理論的に示すことによって、裁判規範としての契約法学を意味あらしめるよう努力すべきである」と。

27頁~40頁までの自分なりのまとめです。あくまでも自分が思い出しやすくするためのものなので、できれば購入して読んでみてください。知的な興奮を味わうことができ、オススメです。最近は、仕事が忙しいので、徐々にまとめたいと思います。

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